Hanacell

赤い糸をたどってハノーファーの名所案内

ハノーファーといえば見本市が有名ですが、観光地としてはあまり知られていません。しかし実は、街のあちこちに伝統的な建物が残っており、興味深い歴史を垣間見ることができます。今回のレポートでは、そんなハノーファーの名所に導いてくれる「赤い糸巡り(Roter Faden)」をご紹介します。

市庁舎の前の赤い糸市庁舎の前の赤い糸

「赤い糸」とは、街中心部の路上に4.2キロに渡って描かれている線。この線をたどると、おしゃれなショッピング通りや市庁舎をはじめ、教会や博物館、歴史的建造物など、ハノーファーの名所36カ所を堪能することができます。

出発はハノーファー中央駅前の観光案内所前。路上に①と書かれており、そこから赤線が伸びています。観光案内所では「赤い糸めぐり」のための冊子が3ユーロで販売され、ドイツ語はもちろん、英語やスペイン語、そして日本語などの計10カ国語から選べます。ちなみに万国博覧会が開催された2000年にはCD-ROM バージョンも販売され、当時私がCD-ROM用の日本語訳を担当しました。

観光案内所前に描かれた①。道路の向こうはハノーファー 中央駅観光案内所前に描かれた①。道路の向こうはハノーファー 中央駅

赤い糸は観光案内所前から南に向かい、まずはオペラハウスやエディギエン教会、ゲオルグ広場、そして新市庁舎、ライネ城(現在の州議会議場)と続いていきます。ライネ城脇を流れるライネ川周辺は、土曜日には蚤の市が立つなど人気のエリア。この周辺は大水の心配がない高台の岸となっているため、10世紀ごろに集落が生まれました。それが今日の「ハノーファー」の始まりだそうです。そして14世紀には、ハンザ同盟の都市に。街の周囲を壁で囲って要所に塔を建て、レンガ造りでゴシック様式のマルクト教会や広場ができました。

マルクト教会の向かいにあるレンガ造りの旧市庁舎は、1410年から建設が始まりました。また、この辺りは旧市街で、中世からの建物や「木組みの家」と呼ばれる北ドイツ特有の建物が並び、歩行者天国となっています。これらの古い建物の多くは、実は第二次世界大戦後に近隣から集めてきたもの。戦争で街のほとんどが焼け落ちてしまったため、ここに昔ながらの街並みを再現したのです。

赤い糸はその後、チャペルや市内最古の家へ。そしてライネ川沿いに並ぶ、フランス人芸術家のニキ・ド・サンファルによる豊満な女性像「ナナ」などを巡り、終着点であるハノーファー中央駅前のエルンスト・アウグスト1世の騎馬像に向かいます。この像は、「(馬の)しっぽの下で」を合言葉に、市民が好んで待ち合わせをする場所です。

ニキ・ド・サンファルによるカラフルな女性像「ナナ」ニキ・ド・サンファルによるカラフルな女性像「ナナ」

ハノーファーには、このように隠れた魅力が点在しているのです。しかしこの赤い糸は、現在はところどころ赤色がはげかけています。これらが修繕されて再び鮮やかな赤い糸となり、ハノーファーの魅力をこれからも発信していってほしいと思います。

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。ジャーナリスト、法廷通訳・翻訳士。著書に『なぜドイツではエネルギーシフトが進むのか』『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』、共著に『お手本の国」のウソ』(新潮新書)、『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(光文社新書)など。
 
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