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見る人に想像させるアートとは? 参加する美術展

ライプツィヒ造形美術館 (Museum der bildenden Künste Leipzig) で、11月18日から女性アーティスト2人による展覧会「変位-Displacements/Entortungen」 が始まりました。国際的に有名なトルコ・イスタンブール出身のアイセ・エルクメンと、レバノン・ベイルート出身のモナ・ハトウムによる今回の展示は、初めて対話する形が実現となりました。2人とも作品の傾向として、展示する場所から特別な意味を引き出して、そこに繋がる社会的で政治的な問いを投げかけることを得意としています。

たとえば、モナ・ハトウムの 「Remains of the Day」という作品は、大人用と子供用の木の椅子と遊具にワイヤーを巻き付けた後に、焼いています。そうするとワイヤーで椅子の形だけが残り、所々に焼け残った木の残骸が残るため、それらは見る人達にどのような出来事が起きたのかさまざまな想像を掻き立てます。アイセ・エルクメンの 「Half of」という作品は、展示場所の空間を半分にしたサイズのボックスを、布とアルミニウムで作ります。今回の展示では、造形美術館の大きな吹き抜け空間を、半分の大きさで5回反復して天井から吊るしています。それにより空間を違うスケールと視点で感じることが可能です。

アイセ・エルクメンの「Half of」
アイセ・エルクメンの「Half of」

作品展示の一方で、美術館としてさまざまな層の来場者を引き寄せるための試みがありました。展示のおよそ1カ月前には、10名ほどの個人的に招待された一般市民によるワークショップが行なわれました。目的は美術専門家による作品解説加えて、一般市民による自由な視点から語るオーディオガイドを作るため。この試みに、日本人の建築家として私も参加しました。国籍や年齢、職業も異なる人達が集まって、まず展示作品の中から自分が興味あるものを選び、お互いに紹介します。ここで重要だったのは、専門的な作品解説を聞いて先入観を持つのではなく、自分が作品から感じることをそのまま伝えるようにすることでした。その後、日を改めて実際に設営中の現場で作品の前に立ってマイクに録音をしました。さらに美術館員のアイデアで、ドイツ人以外の場合は、母国語でも作品についてのコメントを収録。このアイデアにより、ドイツ語以外の言語を聞く人が理解できるのかどうかではなく、さまざまな国籍を持つ人達が関わっているというストーリーを作り出しています。

私は、モナ・ハトウムの「Baustahlrohre(建設用の鉄管)」という作品を選びました。四角い鉄管が積層された多種多様な大きさの塊は、高層ビルの集まる都市のようにも見え、机やベンチを並べた家具の集まりのようにも見えます。建築の仕事でいつも寸法を扱っている私にとっては、スケール感から解放されたこの作品が、見る人に想像する自由を与えているように思いました。展示は2018年2月18日まで開催しています。

モナ・ハトウムの「Baustahlrohre」
モナ・ハトウムの「Baustahlrohre」

ライプツィヒ造形美術館:mdbk.de

ミンクス 典子
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de
 
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