Hanacell

緑と遺跡に囲まれた小さな劇場

今年の夏は暑いですね。涼を求めて、シュトゥットガルト市の南西にある、緑いっぱいのLapidariumに辿り着きました。この「Lapidarium」という言葉、ぴったりとくる日本語訳がなかなか見つからないのですが、古代の建造物や彫刻の断片が展示されている場所のことです。

シュトゥットガルト市立Lapidariumは、素敵なヴィラが立ち並ぶ閑静なメリケ通りにあります。辺りの立派な建物を通り過ぎ、角を曲がると、Lapidariumの入り口が隠れ家のように見えてきます。階段を上って門をくぐると、そこにはテラス付きの大きな庭が広がっており、古い大木やバラの花に囲まれて、大小約200余りの彫刻の断片が回廊や庭に散りばめられています。博物館のように完璧過ぎず、それでいてとても落ち着く素敵な雰囲気です。ここにある彫刻は、ここ500年の間に建物を解体する際や、戦争による破壊によって出土した残骸の一部で、シュトゥットガルトという都市の進化の記録でもあるのです。考古学的にも重要な遺跡として、女王オルガが所有した噴水台(1858年)などもあります。

シュトゥットガルト
木漏れ日に照らされる遺跡のかけら

庭の前身は、1905年にシュトゥットガルトの実業家ジーグル家が、自宅の隣にイタリア· ルネサンス様式の庭をモデルに造らせたプライベートガーデンでしたが、1950年に市がこの土地を買収してLapidariumを設立し、一般公開を始めました。

シュトゥットガルト
上方からの中庭の眺め

私がここを訪れた日は、偶然にもお芝居のプログラムがありました。回廊の横の大きな芝生に4枚の仕切りでバックヤードと舞台がセッティングされ、折りたたみ椅子とクッションを設置すると、あっという間にミニ劇場の出来上がり。この日の演目は、シュトゥットガルト生まれの小説家ヴィルヘルム・ハウフの童話『冷たい心臓(Das kalte Herz)』。童話ということもあって、劇中で話されるドイツ語はとても優しく、外国人の私でも十分理解できました。

たった5人の役者による90分間の演出と、とてもシンプルな舞台セットと小道具で、「お金と温かい心、どちらが大事?」というテーマを見事に演じていました。また、プロの役者の間に交じって、13、4歳の少女の役者もいました。初舞台でしょうか、演技はそれほど上手ではありませんが、初々しくてかわいらしかったです。上演中は自然の涼しい風を感じながら、冷たい白ワインを飲み、実にリラックスできた快適なひとときでした。

Städtisches Lapidarium:
5月1日~9月中旬まで(夏期限定)
水~土14:00~18:00、日11:00~18:00
入場無料
※週末の夕方には芝居や人形劇のプログラムもあり。
www.stuttgart.de/lapidarium

郭 映南
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com
 
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