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ぶどうという植物 5 ぶどう畑の算術

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ワインをめぐる様々な数字は、ワイン選びの参考になることがあります。今回は『ゴーミヨ』などのドイツのワインガイドなどに記載されているぶどう畑にまつわる数字が、何を意味しているのかをご紹介しましょう。

ドイツでは、ぶどう畑の大きさをヘクタール(ha) で表します。1ヘクタールがどれくらいのサイズかをイメージするのによく比較対象とされるのが、スポーツ競技場の大きさです。国際大会のサッカーフィールドの面積が最大で8250平方メートル、野球のグラウンド面積は約1万3000平方メートルですので、1ヘクタールはサッカー場より大きく、野球場より小さめです。家族構成や畑の地形などにもよりますが、一家2 世代で経営する醸造所の所有畑の面積は10~20ヘクタールくらいだといって良いでしょう。

例えば、ワインガイドに記載されている「平均収量57hl/ha」といった数字は、1ヘクタール当たりの収穫ぶどうを圧搾した果汁の量をヘクトリットル(hl)単位(1ヘクトリットル=100リットル)で表したものです。ドイツのワイン法は、地域ごとに収穫の上限を定めており、例えばラインガウ地方では1ヘクタール当たり一律100ヘクトリットルまでの収穫が認められています。「57hl/ha」はかなり少ない収穫量であることが分かります。高品質ワイン生産者の団体、ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会(VDP)が規定している最高ランクのワイン、グローセ・ラーゲの収量上限は50hl/haです。収量に関しては、イタリアのように、例えば8000kg/ haと、ぶどうの重量で表示する国もあります。1万kg (10トン)のぶどうからは、だいたい70~80ヘクトリットルくらいの果汁が得られますので、「57hl/ha」の場合、1ヘクタール当り、約7600kg(7.6t)/haのぶどうを収穫したことになります。

赤品種は通常、単位面積あたりの収量が少ないほど高品質のワインができるため、造り手たちは収量を減らそうと努めています。一方、白品種は赤品種より収量がやや多めでも高品質のものを造ることができるといわれます。収量の加減は、造ろうとするワインのタイプによっても異なってきます。重厚なワインでは収量は少なめ、軽快なワインの収量はやや多めです。

植樹数も近年よく話題にのぼる数字で、やはり1ヘクタール当たりの本数を表します。現在、ドイツの標準的な植樹数は1ヘクタール当り4000~5000本ですが、近年は「密植」といい、ぶどうの根がお互いに競争し、地下深くまで生えて、水分を充分に吸収できるよう、植樹間隔を狭くしている造り手もいます。その場合1ヘクタールあたり1万本程度を植えます。モーゼル地方などの急斜面の畑では、古来から密植が行われており、ブルゴーニュのように約1万本が植樹されている畑がいくつもあります。

樹齢もワイン選びの際に重視されます。ぶどうは植樹後、約3~4年の歳月を経て収穫が可能になり、徐々にその本領を発揮しはじめます。環境、栽培や剪定の方法、造られるワインのタイプにより、約25年で植え替えられるぶどうもありますが、100年を越えて実をつけるぶどうもあります。アルテレーベン(Alte Reben)と表示されるワインは、古木(古樹)から収穫されたぶどうを使用したもので、法規定はありませんが、一般には樹齢30~40年以上の古樹に実ったぶどうで造るワインです。

 
Weingut Karl Haidle
カール・ハイドレ醸造所(ヴュルテンベルク地方)

貝瀬
父フランク・ハイドレ(右)と息子のモリッツ。

ハイドレ家が初めて自社ワインを醸造したのは1949年。一家の拠点であるシュテッテンは古来より主にリースリングが栽培されていた土地で、ハイドレ家の主力品種もリースリング。レンベルガーの栽培を開始したのは約30年前だ。オーストリアではブラウフレンキッシュと呼ばれる人気品種で、近年ドイツでも人気が高まっており、ブラウフレンキッシュの名称でリリースしている醸造所もある。モリッツ・ハイドレはもともとカーデザイナー志望だったが、バーデン地方のゼーガー醸造所とラインガウ地方のキュンストラー醸造所で修業した後、醸造家になることを決意。ガイゼンハイム大学を卒業し、2014年から父親のフランクと共同で高品質のワイン造りに取り組んでいる。

Hindenburgstraße 21
71394 Kernen-Stetten
Tel. 07151-949110
www.weingut-karl-haidle.de


ヴォルケンタンツ リースリング2015 Blaufränkisch Trocken Bunter Mergel
2015 ブラウフレンキッシュブンター・メルゲル 辛口 9.60€

VDP グーツワインとしてリリースされているブラウフレンキッシュ。エンダースバッハとバインシュタインのブンター・メルゲルと呼ばれる泥灰岩土壌で栽培されているぶどうを使用。ブルゴーニュから取り寄せたバリック(小樽)の古樽で半年熟成させている。ヴュルテンベルク地方の赤は軽快なトロリンガーが主流だが、造り手も飲み手もブラウフレンキッシュのポテンシャルに気づき始めた。鮮やかなピンクレッド。もぎたてのチェリーを思わせる清楚で品格ある風味。モリッツはローストビーフとの組み合わせがお気に入り。

 


 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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