連帯税を西側地域にも適用?
廃止論も続く
連帯税の是非をめぐる議論が白熱する中、同税を旧東独州だけでなく旧西独州の支援にも充てる案が複数の州財相から挙がっている。7月24日付のヴェルト紙などが伝えた。
連帯税は、旧東独地域の経済復興支援の名目で東西ドイツ統一後の1991年に導入されたもの。現在では所得税の5.5%が連帯税として徴収されている。同税に関し、2009年に連邦税務裁判所が、財政補てんのために特別に連帯税という制度を設けることは基本法違反であると判決。しかし連邦憲法裁判所は2010年、この決定を無効とする宣告を行った。そしてこのたび、新たにオスナブリュックの会社員が、連帯税の違憲性を問う訴訟を起こしており、これをめぐる憲法裁の対応が注目されている。
一方で、ノルトライン=ヴェストファーレン州のヴァルター=ボリャンス財相(社会民主党=SPD)は「近年、大きな構造改革の波を経験したのは旧東独地域だけではない」として、東西を問わず、負債を抱える州の赤字財政弁済基金としての連帯税活用を提唱。この案に、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州のハイノルド財相(緑の党)、ザールラント州のトスカーニ財相(キリスト教民主同盟=CDU)、バーデン=ヴェルテンベルク州のシュミット財相(SPD)が党派を超えて支持を表明した。また、ニーダ―ザクセン州のヴァイル首相(同)も「連邦全体への開発支援制度を考える必要がある」と述べ、賛意を表明している。連帯税による税収は今年、140億ユーロに達するとみられるが、そのうち実際に旧東独地域のために使われる額は60億ユーロであると見積もられており、残りは連邦政府の財源に流用される。
自由民主党(FDP)からは連帯税廃止を唱える意見が根強く、「2019年までに連帯税を段階的に廃止していくべき」との声が挙がっているが、これが連立パートナーであるCDUとの不協和音を生んでおり、ショイブレ財相(CDU)およびメルケル首相(同)は、「連帯税に関するFDP案には賛同できない」と主張している。
なお、連帯税の導入を決断したコール元首相(同)自身が「連帯税は1999年までに完全に廃止されるべき」として、1996年時点での連帯税廃止を構想していたとされるが実現には至らず、現在に至るまで引き継がれている。