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世界遺産登録を目指すヘレラウ工房

ドレスデンの中心地から北へトラムで15分程走ると、ヘレラウ(Hellerau)という地区に到着します。ここは、20世紀初頭に欧州中で流行した田園都市(Garenstadt)の提唱者であるエベネザー・ハワードの思想に基づき、1909年に造られたドイツ初の田園都市です。

ここには現在も、花が咲き乱れ、手入れの行き届いた庭のある、小さなかわいらしい家々が建ち並んでいます。その中にあるドイツ工房ヘレラウ(Deutsche Werkstätten Hellerau)は、主に家具製作を手掛ける複合工房。その一角に、オフィス用に新たに建設された巨大なガラスの建物の中で、「ユネスコ世界遺産。ドイツを巡る旅」と「ヘレラウ。計画と生活」と題された2つの展覧会が同時開催となり、1月22日にオープニング・パーティーが開催されました。

展覧会の会場風景。中心部がパネル展示、両脇にデスクが並びます
展覧会の会場風景。中心部がパネル展示、両脇にデスクが並びます

展覧会の監修を担当したのは、フランクフルトにあるドイツ建築博物館(Deutsches Architekturmuseum)とドレスデン工科大学で、学術方面からの支援を前面に押し出す力の入れようです。それもそのはず、このたびヘレラウは、正式に世界遺産登録を申請したのです。現在ドイツ国内で世界遺産に登録されている箇所は、教会や城、城塞、庭園、自然の風景、中世都市など、世界第4位の38を数えますが、そこへ加わるべく、ヘレラウが名乗りを上げたというわけです。ドレスデンには、エルベ川の橋の建設によってエルベ渓谷が世界遺産登録を取り消されたという苦い経験があります。その巻き返しを狙ってかどうかは分かりませんが、ヘレラウはドイツ初の田園都市として、現在も町の景観を守ろうとする住民の意識が高い上、ドイツ工房ヘレラウが地域の手工業文化に貢献しており、世界遺産に値するというのが、登録を推薦する人々の主張です。

ドレスデン工科大学トーマス・ヴィル教授のスピーチ。多くの地元住民が駆け付けていました。
ドレスデン工科大学トーマス・ヴィル教授のスピーチ。
多くの地元住民が駆け付けていました。

何千年も昔の巨大な建造物であるピラミッドや世界最古の木造建築の法隆寺、古代ローマの都市が火山の爆発によって瞬時に火山灰に埋もれたポンペイの遺跡など、世界遺産という制度が存在する以前からすでに世界的に有名だったスポットの登録がひと通り終了した現在、新規登録の評価基準をどうするかが議論されています。ヘレラウの登録申請は、新たな評価基準の議論をさらに深め、人々の意識を喚起するのに一役買うことになるでしょう。

展覧会では、ワンルームの大空間の中央にパネルが設置されています。その周囲には工房スタッフのデスクが並び、世界遺産の美しい写真を見ながら、彼らの日常業務の様子も見学できます。4月4日(金)まで開催。
www.dwh.de


福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/

 
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