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So. 24. Okt. 2021

もっと演劇を見よう!

ハノーファーは演劇が盛んな町です。州立劇場が4つあり、連日さまざまな作品が上演されています。中でも人気なのが、「若い演劇(Junges Schauspiel)」と名付けられたもの。演劇やオペラ、コンサートは、年配の観客が多くなりがちですが、何とか若い人をひき付けようと数年前にハノーファーで始まり、2015年は11本の作品を上演しました。

その一つが『物理学者(Die Physiker)』。アインシュタインやメビウスを名乗る精神病院の患者たちの話で、1961年にスイス人のフリードリヒ・ドュレンマットにより書かれました。すでに欧州の劇場などで上演されており、多くの人が知っている内容なので、どんなふうに上演されるのかワクワクしながら見に行きました。すると、カーテンを引いた空間、プロジェクターでの映像、3人の患者の対話、耳の大きなモンスター、ディスコミュージックなど、モダンな手法で劇化されていて、私が見に行ったときは満員でした。この作品は、2月11日にも上演されます。

『物理学者』
『物理学者』

そして、私が見たもう一つの作品が『我が闘争(Mei n Kampf )』です。作者は、ハンガリー出身のユダヤ人、ゲオルゲ・タボリス。彼は実際に父親を強制収容所で亡くしているのですが、作品はコメディータッチで描かれていて、笑いを誘います。女性がヒトラーを演じ、男性が少女を演じているのも面白い。画家を目指してウィーンに来た若きヒトラーが、絵の才能を認められず、ユダヤ人の本屋のオーナーの言葉を受けて政治の道を進むようになる様子を描いています。残酷な場面はないのですが、ペットの鶏を殺す描写が真に迫っていて、ナチスのしたことを象徴しているかのようでした。最後の場面で、赤字に白丸のナチスの旗を模したものが出ましたが、鉤十字は描かれておらず、ドイツではやはりタブーなのだと感じました。この作品は2月11日、25日、5月21日にも上演されます。

『わが闘争』
『わが闘争』

どちらの作品の上演の際にも、終了して拍手がやむと、俳優の一人が前に進み出て難民のための寄付を募りました。これまでに2万ユーロが集まったそうですが、継続してハノーファーの難民支援団体に寄付するために行っているのだとか。ハンブルクでは、劇場で難民が寝泊まりしていると聞いたことがありますが、難民問題は日常の隅々まで行きわたっているのだと感じました。演劇を見に行って、寄付をして帰るのは気分のいいものです。ただ演劇を楽しむというだけでなく、物事を考えるきっかけにもなり、いろんな意味で世界とつながっているんだなぁという気がします。

ハノーファー州立劇場の公式サイト(ドイツ語)
staatstheater-hannover.de/schauspiel/

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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