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So. 17. Nov. 2019

日本語の「出身国授業」が存続の危機

外国に住む日本人の子どもの多くが、ドイツの現地学校に通う以外に、日本語を習っていると思います。それは通常、日本語補習校と呼ばれます。ハノーファーにも日本語補習校はありますが、最近、一般にいう補習校とはずいぶん違いがあることが分かってきました。

ハノーファーを州都とするニーダーザクセン州では、学校教育の一環として出身国の授業が行われています。1980年代に「母国語授業」という形でスペイン語やトルコ語が始まったのが原型で、現在は20カ国以上の言語の授業が行われています。移民の多いドイツでは、将来支障なく母国へ戻れるようにという配慮と、母国語という土台があってこそ、ドイツ語がきちんと習得できるという考えから実施されてきました。欧州連合(EU)加盟国の言語が中心ですが、中近東をはじめ、アジア圏ではベトナム語と日本語が取り入れられています。その国の国籍を持つ子どもは誰でも参加でき、無料です。2005年に「出身国授業」と名称が変わり、それとともに、小学1年生から高校生まで対象としていたのを、小学4年生までとしました。トルコ語など一部の言語は、例外的に高学年まで授業が行われています。

教員は州内に153人、そのうちハノーファーには53人おり、州と雇用契約を結んでいます。日本語の授業は1987年に、日本企業を誘致する目的で始まったそうです。20年以上前から、1人の先生が小学1年生から高校4年生までを教えてきましたが、今夏で定年退職。それをきっかけに、州は日本語授業の打ち切りを通告しました。ハノーファーには現在、いわゆるハーフである国際児と日系企業の駐在員の子どもが、合わせて40人ほどいます。廃止は困ると、保護者有志で署名を集めて州に陳情書を提出しました。その様子は、地元紙ハノーファー・アルゲマイネでも取り上げられました。

ハノーファー
ハノーファー・アルゲマイネ紙に掲載された記事(2015年6月30日)

一方の他都市の補習校は、日本の文部科学省の認定を受け、保護者主体で運営され、いずれ母国に戻る子どもを主に対象としているようです。出身国授業は基本的にはドイツに定住する子どもを対象としており、成績は現地校の通知表に記載されるなど、正式な授業としての扱いです。また、ハノーファーのこの日本語授業は、運営に保護者が関わることはなく、日本政府からの認可や補助もありません。州が教員を雇用して教室を提供し、授業料は無料。非常にありがたいことです。ドイツは国が教育について責任を負うというスタンスですから、大学までの授業料はほとんどかかりません。

ハノーファーは広島市と姉妹提携をしており、終戦70周年に当たる今年、広島関連の催しを多数企画しています。それなのに日本語授業が打ち切りなるとしたら、とても残念なこと。州からの返事はまだですが、州知事宛に陳情書を出したところ、「知事は個人的には関与できないが、教育相に回付しました」と知事官邸より返事がきました。一市民にもきちんと返事をくれるのだと、ちょっと感激しました。日本語の授業がなんとか存続されるよう、希望を持っています。

ハノーファー
陳情に訪れた保護者たち

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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